2017-18シーズンには、1試合平均で29.0本の3Pが打たれました。
その10年前の07-08シーズンの平均は、18.1本。
さらに10年前の97-98シーズンに遡ると、試投数じゃわずか12.7本となります。
ここ20年で、3Pのシュート回数は倍以上に増えているのです。数字を確認せずとも、体感できるレベル。
そして古くからリーグを知るグレッグ・ポポビッチは、現在の3PインフレのNBAを良きと思っていないと。
3Pインフレに苦言を呈すポポビッチ
96-97シーズンからスパーズを指揮してきたポポビッチの、3Pが増え続ける今のNBAへのコメント。
「こんなのはもうバスケットボールではないよ。美しさがなく、非常に退屈なものだ」
この部分のコメントだけが世に出回っているので、この他のポポビッチの3P論についても訳しておきます。
(3Pの多用が)正しいことだと証明されたから、最近は3Pにかなりの重きが置かれているね。
今や試合後にスタッツシートを見たとき、一番最初に注目されるのは3Pだ。もし君がたくさんの3Pを決めて、相手チームが決めれていないとすれば、勝つのは君だ。
君はどれだけリバウンド、ターンオーバー、トランジションディフェンスがあったかなんて気にしない。
これが、3Pがどれだけのインパクトを与えているかの証拠さ。
私は3Pを20年間嫌い続けてきた。
だからいつもジョークを言い続けてきたんだ。
“もし違った形で試合をしたいのなら、4ポイントプレーを設けよう。みんな3Pが好きだから、4Pも気に入るはずさ。5ポイントプレーが決まったときなんかは、観客はみんなシートからジャンプして喜ぶだろうさ。素晴らしいことじゃないか”
こんなのはもうバスケットボールではないよ。美しさがなく、非常に退屈なものだ。
しかし、これは取り組んでいくべきことではある。
ポポビッチは、戦術としての有効性を認めつつも、それにしても重要視されすぎた3Pへの不満を口にしているわけです。
以下は、スパーズとリーグの『全シュートの内の3P割合』を記した歴史です。
シーズン | スパーズ | リーグ |
18-19 | 27% | 35% |
17-18 | 28% | 34% |
16-17 | 28% | 32% |
15-16 | 22% | 28% |
14-15 | 27% | 27% |
13-14 | 26% | 26% |
12-13 | 26% | 24% |
11-12 | 26% | 23% |
10-11 | 26% | 22% |
09-10 | 23% | 22% |
08-09 | 25% | 22% |
07-08 | 25% | 22% |
06-07 | 25% | 21% |
05-06 | 21% | 20% |
04-05 | 22% | 20% |
03-04 | 18% | 19% |
02-03 | 20% | 18% |
01-02 | 19% | 18% |
00-01 | 17% | 17% |
99-00 | 14% | 17% |
98-99 | 14% | 17% |
97-98 | 14% | 16% |
96-97 | 18% | 21% |
特に3Pが多用され始めた昨今では、リーグ平均の下回りが続いていると。
名将ラリー・ブラウンのエッセンス
NBAファイナルに進出したアイバーソン擁する76ersや、03-04シーズンに優勝したピストンズを率いたことでおなじみのラリー・ブラウンは、3Pやダンクなどのプレーを好ましく思わないHCでした。
ダンクをできた場面であえてレイアップで決める選手に、拍手を送ったりしていたくらい。
曰く、派手なプレーは得点できたときには盛り上がるが、失敗したときのダメージが大きいと。
そして、ポポビッチはこのブラウンからコーチ業を学んだことでも知られています。
ポポビッチが3Pという飛び道具を嫌うのも、ブラウンと同じエッセンスを持っているからなんじゃないかと思いますね。
3Pシューター代表のステフィン・カリー
冒頭で載せた画像を再掲。

これはbleacher reportがポポビッチのコメントを取り上げたインスタ投稿のスクショなんですが、一番下のコメント主に注目です。
Nope(そんなことない)!とリプライしているのはステフィン・カリー本人。
3P多用の賛同者として、もっとも発言力があるのは間違いなくカリーでしょうね。
カリーという選手がリーグに存在していなければ、今の3Pインフレももう少し収まりのあるものになっている気さえします。
例えば、カリーが3P成功数で歴代最多を更新した15-16シーズン、カリー1人で402本成功に対し、スパーズは合計で570本となっています。
選手個人と一つのチームの比較とは到底思えない数字。
この圧倒的3P製造機のカリーをエースとしてウォリアーズは3度優勝しているわけですから、3Pの多用は使い手によっては間違いなく有効であると言えます。
少し前までのスパーズの実績をみれば、ポポビッチの戦術は間違っていなかったとなりますが、ご存知の通り最近のスパーズからは強豪チームとしての権威が失われつつあります。
昨季もプレーオフギリギリ、今季は進出が微妙なチーム成績。
自分のスタイルが正しいことを、ポポビッチはスパーズの勝利を以って証明できるでしょうか。
参考記事:Yahoo Sports