今ではクレイとのスプラッシュブラザーズ兄貴分としての印象が強いカリーも、キャリア初期には別の選手の「弟分」としてバックコートコンビを結成していました。
当時のステフィン・カリーの印象は、「ウォリアーズのモンタ・エリスじゃない方のガード」くらいなもの。
カリーがパッとしなかったと言うよりも、あの頃のエリスの活躍が凄かったという感じです。
個人タイトルとはほぼ無縁なエリスの全盛期の凄さは忘れられてしまいがちですが、知る人ぞ知る魅力がエリスにはありましたよね。
モンタ・エリスのウォリアーズ時代
高校卒業後、2005年のドラフトで2順目40位指名されたエリスは、指名順位が示す通りデビュー当時は全く期待された存在ではなく、1年目の平均得点も6.8点に留まりました。
しかしそこから飛躍を見せ、2年目には平均16.5得点を記録してMIPを受賞。
3年目は20.2得点、4年目にはバロン・デイビスが移籍したことでエリスがチームの看板選手となり始めていた頃、翌2009-10シーズンにステフィン・カリーが入団しました。
2009-10シーズンにキャリアハイの平均25.5得点
カリーのNBAデビュー年である09-10シーズンには、キャリアハイの25.5得点を叩き出し絶好調。翌10-11シーズンにも平均24.1得点を記録しており、このあたりがエリスの全盛期と言えます。
カリーの存在は認知していましたが、当時のウォリアーズの主役は完全にエリスでしたね。
2012年には、キャリアハイとなる48得点をサンダー相手に記録しています。
ハイライト動画を観てみましょう。
エリスの活躍の一方で、ウォリアーズは低迷が続いていました。エリス在籍時代、ウォリアーズは一度しかプレーオフに進めておらず、シーズン成績を勝ち越したのも2回だけ。
ここでウォリアーズが、トレードに動きました。
ウォリアーズから放出されたエリス
2011-12シーズンの後半でのトレードにより、エリスはバックスに放出されました。その他の要員としてエペイ・ウドゥとクワミ・ブラウンがいますが、このトレードの肝はやっぱりエリスでしたよね。
で、ウォリアーズは見返りにアンドリュー・ボガットとスティーブン・ジャクソンを獲得。ジャクソンはすぐに放出してしまったので、実質ウォリアーズが手にした戦力はボガットの一人でした。
トレードされるまでに、エリスは平均21.9得点を記録してウォリアーズに貢献していた一方で、足の怪我を頻発させていたカリーはこのシーズン26試合のみの出場で、平均得点は14.7得点というスタッツでした。
結果的に、このトレード以降のウォリアーズはご覧の通りの常勝軍団へと進化し、カリー個人の活躍も言わずもがなです。
これだけをみると、当時はそこまでパッとしなかったカリーを残し、個人としての活躍が目ざましかったエリスを放出するという博打を仕掛け、結果として大成功を収めたウォリアーズのGMが凄すぎるように思えます。先見の明しかないじゃない、と。
ところがこのトレードには、当初ウォリアーズはエリスでなくカリーを放出しようとしていたという裏話があるのです。
交渉相手のバックスが、足の怪我を頻発させていたカリーの獲得を拒んだため、トレード要員をエリスに変更にしたと元ウォリアーズのGMが明かして話題となりました。
2011-12シーズンに、カリーが年間を通して健康状態を貫いていれば、逆に今のウォリアーズの成功はなかったと言えます。
ウォリアーズ主観にしても、カリー主観にしても、改めて人生は運ゲーだということを思い知らされるエピソード。
「僕が居たら、ウォリアーズは優勝できなかった」
このトレードを機に、エリスはすっかりジャーニーマンとなりました。その後、バックス、マブス、ペイサーズと3チームを渡っています。
ウォリアーズ退団後は、平均20得点台へのカムバックを果たせていません。ハイライト動画になるようなプレーは度々見せていたし、実力者であることは認知していても、「スター」と呼べるほどの1級選手とは呼べない、かな。
平均25得点を記録したシーズンでさえ選出されず、キャリアで一度もオールスターに出場したことがないと言う不憫さも持ち合わせています。
おまけに、自分の退団をきっかけとしてウォリアーズが上昇気流に乗り始めたわけですからね。
魅力的な選手ではあるものの、ボール保有時間の長いエリスがファーストオプションとなっていれば、今のウォリアーズの組織的なオフェンスは実現されていないでしょう。
カリー&エリスのコンビは観ていて楽しいものではあったけれど、シーズン結果が示す通り、勝利にはなかなかたどり着けませんでした。
ウォリアーズ在籍中に、エリスがサイズ不足の自分とカリーではバックコートで共存できないと漏らしたこともありました。
後に、エリスが自身の退団とウォリアーズの優勝について語っています。
以下、一部抜粋で。
「もし僕がウォリアーズに居たままだったら、僕らはチャンピオンシップを獲得できていないだろうね。」
「僕が移籍した後の状況を見てみなよ。彼らはチャンピオンシップを手にした。」
「ウォリアーズはクレイを獲得してよりサイズの大きいラインナップを結成し、ハリソン・バーンズをバックアップとして配置した。僕が言ったことは正しかったろう。もし僕とステフがまだそこにいたとして、サイズ不足のバックコートコンビで優勝するのは難しかったと思うんだ。」
191cmのエリスに対し、クレイの身長は201cmです。
同じく191cmと公表されているカリーとバックコートコンビを組むのは、クレイのように身長2mオーバーの選手の方がよかったというエリスの理論。
この理論は、エリス自身の退団を以って正しさが証明される事となりました。
現在のエリス
エリスは、昨季17-18シーズンを丸々プレーしていません。契約を望むチームが現れず、未だFAの状態。
16-17シーズン、最後にプレーしたペイサーズでは、ルーキーイヤー以来となる平均得点1ケタに沈んでいました。今の立場と32歳という年齢を考えると、まだスターターとしてプレーできるかは微妙なラインですね。
ちなみに、16-17シーズンは77試合中44試合でベンチスタートでした。出場機会さえ十分に与えられれば、まだ結果を残せる選手だとは思っています。
フィットするチームが見つかり、18-19シーズンにエリスのプレーをもう一度見る事はできるでしょうか。