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カリーとウォリアーズに影響を与えた、スティーブ・ナッシュとサンズ

2015年にNBAを引退したスティーブ・ナッシュ。

2年連続でMVPを受賞した彼のプレースタイルは、後世のいろんなプレイヤーに影響を与えました。

同じく2年連続でMVPを受賞しているウォリアーズのステフィン・カリーもその一人。

カリーはインタビューでの「好きなプレイヤーは?」「尊敬するプレイヤーは?」という質問に対し、必ずと言っていいほどナッシュの名前を挙げています。

ナッシュが引退を発表した時にも以下のツイートをしていました。

“お疲れ様でした!あなたは僕をインスパイアし、道を切り開いてくれた。あなたのすべての成功を祝福します!これからの人生を楽しんでください!”

リスペクトの込められた文章。

 ステフィン・カリーとスティーブ・ナッシュ

今はもう放送終了になっているんですけど、昔BS-TBSで「REAL NBA」という番組がやっていました。覚えている人はいるだろうか。

元はアメリカで放送されているNBAチームの舞台裏に迫ったドキュメンタリー番組で、その中に当時の新人選手が集まってNBAのあれこれについて語りあうコーナーがありました。

そのとき目のクリクリした少年が「スティーブ・ナッシュのあの緩急のある動きは凄い」と言っていたのを覚えています。

今思えばそれがカリーでした。

あの少年が今やリーグのNo.1選手とまで言われるようになったのは実に感慨深いです。

ナッシュとカリーのキャリア全体の流れには少し共通点があるように思えて、それはデビュー前からキャリア初期にはそれほど注目された存在ではなかったところ。

例えばレブロンはデビュー前から神童と呼ばれ、コービーも1年目こそはベンチプレイヤーでそれほど目立たなかったものの、2年目には当時の最年少でオールスターのスターターに選出されています。

もちろん、それもレブロンとコービーの想像を絶する努力によるものが大きいでしょうが、注目される時期は相応に早かったです。

そんな中でナッシュとカリーは、スタートこそ遅れてはいたけど、着実に成長を重ねて今の地位まで上り詰めていったタイプ。

PGとしての2年連続のMVP受賞に加え、共に50‐40‐90クラブのメンバーであることも共通点の一つです。

50‐40‐90クラブとは、FG50%以上、3P40%以上、FT90%以上の確率を同時に満たすことで、これが特別優れたシューターであることの証になっています。

NBAの歴史上、50‐40‐90を成し遂げたのは7人しかいません。

その中で、ナッシュは歴代最多の4度、カリーは2015-16シーズンに初めて仲間入りをしました。

リーグに革命を起こしたナッシュ率いるサンズ

2004-05シーズン前にナッシュはマーベリックスからサンズに移籍。

ナッシュ1人の加入によって前年リーグ最下位だったサンズが、なんと一気にリーグ1位に躍り出ます。

このときのサンズは、ナッシュを中心に「超」がつくほどの攻撃的なオフェンススタイルを駆使していました。

「3秒オフェンス」と呼ばれたラン&ガン主体のオフェンスは、観ていて本当に面白いものでしたね。

ちなみに、日本人初のNBAプレイヤーとなった田臥勇太が開幕当時在籍していたのもこのサンズです。

アップテンポなオフェンスを展開するためのPGとして、田臥のスピードが買われていました。

当時のサンズのオフェンスハイライトがこちら。

これほどオフェンス重視のスタイルを貫いたチームはかつて存在せず、さらにこのスタイルレギュラーシーズンでリーグ首位になったものだから、まさに革命でした。

ハーフコートオフェンス時には、ナッシュとセンター陣によるピック&ロールが基本的な作戦。

ナッシュは歴代屈指のピック&ロールの使い手でもあります。

このピック&ロールにより、コートに上手くスペースが生まれ、スムーズなオフェンスを展開していました。

この戦術によりどれだけの得点が量産されてきたかわかりません。

僕自身も学生時代はナッシュのピック&ロールを参考にして、センターと合わせのプレーを練習していましたね。

身体能力を生かしたプレーが目立つNBAの中で、主に技術力を生かしたナッシュのプレーには参考になるものが多かったです。

オフェンス重視のチームはプレーオフで勝ちきれない

レギュラーシーズンでは安定していい結果を残すも、サンズは優勝という結果を残せません。

特にナッシュ&サンズの前には、ティム・ダンカン率いるスパーズが度々立ちはだかりました。

当時からスパーズは鉄壁のディフェンスを誇るチーム。

オフェンシブなサンズがディフェンシブなスパーズにことごとく敗れていく様は、NBAで長らく定着している「オフェンスのチームはディフェンスのチームに勝てない」という定説をサンズが自らの敗北をもって証明しているかのようでした。

ナッシュ個人のディフェンス力のなさを指摘する声も多かったです。

それでも、ナッシュがサンズに移籍してから6年目となる2009‐10シーズン、とうとうプレーオフでスパーズを破るときがやってきます。

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高年齢でも魅せ続ける

下の動画は2010年でのカンファレンスセミファイナル第一戦でのナッシュのハイライト。

ナッシュはこのときすでに36歳ですが、凄まじい活躍です。

サンズはこのシリーズを4勝0敗のスイープで下し、カンファレンスファイナルに駒を進めます。

ナッシュファンとして、このときは本当に興奮しましたね…

やっと天敵を倒せた…!という思い。

しかし、カンファレンスファイナルではこの年に連覇を果たすレイカーズに屈します。サンズのディフェンス力不足を上手く突かれ、コービーに無双されてしまいました。

コービーはこのシリーズで33.7得点 8.3アシスト 7.2リバウンド FG52% 3P43%

完全にやりたい放題。

シリーズ中の両チームの平均得点はレイカーズが113.5点・サンズが109.3点。サンズも十分点は取れていますが、いくら何でも失点が多すぎ。

やはり、ディフェンスができないと脆い…

当時のサンズシステムを上手く取り入れた現在のGSW

今のウォリアーズはかつてのサンズのオフェンスを参考にし、さらにそれを進化させています。

なんといっても最大の武器は3P。

速攻でリバウンド要因がいない場面でも、なりふり構わず打っていきますよね。

そして、各選手のオフボール時のスクリーンプレーも巧みです。

スペーシングを作るために、ウォリアーズの選手が足を休めることはほとんどありません。

以下の動画はウォリアーズのスクリーンプレーを取り上げたもの。

バスケを観戦するときはボールマンだけに注目してしまいがちですが、ウォリアーズの場合はオフボール時の選手の動きを観ているだけでも十分楽しめます。

ちょっとやそっとの練習ではここまで組織的な動きはできないはず。

こういった細かい動きの出来次第で、チーム力は大きく左右されるのでしょうね。強いチームはとにかく選手の動きが止まらない。

そして当時のサンズとの大きな違いは、ウォリアーズがディフェンスにも強みをもつチームであること。

特に、スイッチディフェンスの連携がすごいです。簡単には相手オフェンスのアウトナンバーをつくりません。

ディフェンス時にもオフェンス時と同じく圧倒的なチームワークを見せつけています。

ちなみに、現在ウォリアーズでHCを務めているスティーブ・カーは2007年から2010年までサンズのGMを務めていました。

当時のサンズのオフェンスを間近で目にしてきたからこそ、生かせる経験があるのだと思います。

なにより、ナッシュ&サンズでは成し遂げられなかった、オフェンスシブなスタイルで優勝を果たしていることにグッときます。

あの当時のナッシュとサンズが今のウォリアーズにつながっていると思うと、なんかうれしい。

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ナッシュはウォリアーズの選手育成コンサルタントに就任

現在、ナッシュはウォリアーズの選手育成コンサルタントコーチとして活動しています。コーチとしての就任が決まったときのカリーのリアクション。

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「やっとまともなコーチが来てくれたよ」

軽快なジョークでお出迎え。

実際にカリーと練習している姿を見ることができます。こちらは、ピック&ロールの練習をしている様子。

続いてこちらはトンプソンとの練習風景。

ナッシュはトンプソンに「プレー中の重心をもっと下に置くように」とアドバイスしたそうです。

また、ケビンデュラント獲得の際にはナッシュもウォリアーズのコーチとして一役買った、とのニュースもありました。

どんな形であれ、ナッシュが今のウォリアーズと関わってくれているのはうれしいな。